骨折
小型犬の橈骨尺骨骨折
橈骨尺骨骨折について
骨折には様々なケースがありますが、ことに小型犬や超小型犬の骨折は年々増加傾向にあります。
こういった小型犬の骨折は、大多数が橈骨及び尺骨(前腕骨)の骨折で、特に1歳前後の若い犬で多発します、その中でも手首の関節付近で折れることが多く、手首に極端に近い場所で骨折し、適切な固定が困難になるケースもしばしば見られます。
また、癒合不全を起こしやすいことでも知られており、治療には注意が必要です。
小型犬で橈骨尺骨の骨折が多発する原因として、以下のようなことが考えられています。
① 物理的原因
犬の重心は上半身にあるため、落下の際に前足が一番先に着地する
② 生活習慣
小型犬の大半が室内で生活し、普段からソファーやベッドへの昇り降りを繰り返しているが、これによって橈骨尺骨に骨疲労や骨硬化が生じ、骨折しやすい状態になる
③ 遺伝的素因
小型犬の中でもより小型の個体が好まれる結果、矮小化傾向が生じる
治療方法について
橈骨尺骨骨折の治療は、プレートもしくは創外固定を行うのが一般的です。
骨折部位が骨の中央に近く、手首の関節から距離がある場合にはプレート・創外固定とも用いることができます。
手首の関節から骨折面までが極端に短く、プレート固定が困難な場合は、当院ではTubular(チュブラー)創外固定システムと呼ばれる器具を用いて治療を行っています。
実際の症例【プレート固定】
犬(トイプードル、3歳、体重3 kg、去勢雄)
診断:左橈骨尺骨遠位骨折
治療前

手術直後

治癒(術後2ヵ月)

実際の症例【Tubular(チュブラー)創外固定】
犬(雑種、5ヶ月齢、体重1.6kg、未避妊雌)
診断:橈骨尺骨遠位端骨折(橈骨は遠位に2カ所の骨折を認める)
治療前

手術直後

抜去直前(術後2ヵ月)

抜去後(術後4ヶ月)
