その他
頭蓋下顎骨症
頭蓋下顎骨症とは
頭蓋下顎骨症は、生後数ヶ月齢の犬で、主に頭蓋骨(特に側頭骨、後頭骨、下顎骨、まれに四肢)に発生する、非炎症性・非腫瘍性の骨増生疾患です。
原因は不明ですが、特定の犬種に発生しやすく、遺伝的素因の関与が推測されています。好発犬種はウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、スコティッシュテリアですが、他の犬種*での発生も報告されています。
*ボストン・テリア、ケアン・テリア、グレート・デーン、ドーベルマン、ラブラドール・レトリーバー、シェットランド。シープドッグ、イングリッシュ・ブルドッグ、アイリッシュ・セター、ボクサー、ブルマスティフ、グレート・ピレニーズ、など
症状・診断
成長期の早い時点(生後4ヶ月齢あたり)から下顎骨、側頭骨、後頭骨の顕著な骨増生が始まります。しかし症状を示すまでにはしばらく時間がかかり、飼い主さんは犬の痛みや不快感、開口障害による摂食障害、流涎、発熱、体重減少をきっかけに発見することが多いです。骨の成長の終了とともに骨増生も終息し、その後は骨の再構築(リモデリング)によって正常な形態に近づいていきますが、変形は残ります。
診断に必要な検査は、触診で下顎骨の肥大や開口障害を確認し、本疾患が疑われる場合は血液検査、レントゲン検査にて頭蓋骨(側頭骨・後頭骨・下顎骨・四肢など)の骨増殖所見とヒストリーから確定診断を導き出します。
成犬の下顎骨
(下顎骨の厚みと骨形成は正常)
生後6ヶ月齢の頭蓋下顎骨症
下顎骨(赤矢印)・後頭骨(黄矢印)の骨増殖を認める
治療
異常な骨増生を抑制する根本的な治療法は見つかっていません。開口時に痛みが生じる場合はステロイドによる疼痛緩和が有効とされます。幼少期に発症しやすいので、栄養不足に陥り低血糖症状が出ないよう食事の工夫が必要です。リモデリングが始まる時期までに開口障害が生じなければ、一般的に予後は良好と言われています。